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香りのコラム

Connect with・・・ ~イシュタルからのお手紙~至高のバラの香りとは

先日久しぶりに蓬田先生とお電話でお話をしました。

先生のバラの香りについての探求心はまだまだ健在で、常にバラの香り表現を様々な観点からアプローチすることに余念がありません。また新しく、今まで発表した香りについての研究を一冊の雑誌にまとめるなど、精力的に活動していらっしゃいます。

私は昨年、先生の久しぶりの講演のお手伝いをした際に表現されていた、マズローの五段階欲求から考察したバラの香り体験という部分が非常に興味深く、この分野を深堀していくこそが私の役目とも直感的に感じたのでした。

簡単に説明すると、人には生理的欲求に始まり、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求を経て最終的には自己実現の欲求へと繋がる。その自己の持つ能力や可能性を最大限に発揮したい。という欲求。すなわち「自分らしく生きたい」という欲求とバラの香りの世界とがリンクし「至高のバラの香り体験」という表現をされていました。至高のバラの香りは芸術とリンクする。私には、バラの香りの世界そのものが芸術とも思えるし、またその香りを体験することで、人の持つ芸術性のスイッチに作用し、その可能性を最大限に発揮させる役目にもなり得る。と思いました。

美しいものはそれ自体が美しいのではなく、美しいと思える感性をもって初めて美しいものとなる。

感性を育てるということは、芸術を理解し次世代へと続くさらなる美しくも新しい芸術を創り出していけるということだとも思います。

ミスターローズと称された日本を代表するバラの育種家、鈴木省三さんは生前、「美しいバラを創り出すためには、本物の芸術を理解しなければならない」と、あらゆる分野の芸術を愛したそうです。またバラに敬意を表し、海外からバラの苗を迎える際には、タキシード姿でバラをお迎えしたといいます。新種のバラの花が咲くころにはバラの傍で眠り、その瞬間を共にしたといいます。

私には何か、人にそこまでさせてしまうバラの力って凄まじいな・・・と畏敬の念を感じてしまいました。

生花のバラというのは、その姿かたちの美しさはもちろん、美しい香りが人を魅了します。

花形や色、特性などは様々な経験からある程度予想を付けて生み出すことが出来るといいますが、香りだけはその経験値をもってしても、想像通りの香りのバラを創り出すことは出来ないそうです。これもまたバラの香りの秘密、不思議です。だからこそ、美しい香りのバラに人は惹きつけられ続けるのではないか。本能的に求めるのではないかと感じます。

「香りのないバラは笑わぬ美人に同じ」これはまだ私がこの仕事に就いて間もない頃に知ったアメリカのバラ会の表現ですが、言い得て妙だと忘れられない言葉の一つです。

美しい姿かたちはそれだけでも十分に価値があります。しかしそこに香りがあると魅力が何倍にもなる。人に例えるならば、能面のようなただ美しい美人はつまらない。笑顔やさまざまな表情があってこそ魅力的ということでしょうか。

モダンローズの香りにはタイプがあり、それらの印象はさまざまです。時間と共に香りも変化していきます。香りはいわばバラの表情ともいえそうです。

一つ書き添えるとするならば、人間の表情と違い、バラの香りには「醜い」であるとか「憎たらしい」という表情はない。

あぁ、さすが美の象徴といわれるゆえんも納得!と思ったのでした(笑)