バラの種類
バラの種類は、1867年に発表されたハイブリッド・ティー・ローズの第一号「ラ・フランス」を境に、それ以前に作られたバラを“オールドローズ(古代バラ)”、以降に作られたバラを“モダンローズ(現代バラ)”といいます。
現在も多くの先人の努力を受け、毎年世界中から新しい栽培バラの品種が発表され続けており、国際的に権威のあるバラ品種名鑑「モダンローズ(Modern Roses)」(アメリカバラ協会・国際バラ品種登録局発行)には25,000種を超える品種・原種が記載されています。(実際に栽培されている品種は記載よりは少ないですが、それでも数千に及ぶと考えられています。)
バラの3つの形態
モダンローズ(現代バラ)は45系統に分類されていますが、栽培の便宜上はその外部形態によって、木立性の木バラ(Bush Rose)、つる性のつるバラ(Climbing Rose)とこれらの中間形のシュラブ・ローズ(Shrub Rose)の3つに分けられ、さらに形態別に細分されます。
木立性の木バラ(Bush Rose)
ふつうの株立ちのバラで、系統が多く、栽培品種も多い。
ハイブリッド・パーペチュアル・ローズ(HP)/ティー・ローズ(T)/ハイブリッド・ティー・ローズ(HT)/ポリアンサ・ローズ(Pol)/ミニチュア・ローズ(Min)/フロリバンダ・ローズ(F)
つる性のつるバラ(Climbing Rose)
つる性の枝幹をもったバラで、垣根やアーチ、ポール仕立てなどに向く。
クライミング・ローズ(Cl)
シュラブ・ローズ(Shrub Rose)
木バラとツルバラのどちらにも分けられない中間の系統。
シュラブ・ローズ(S)
主な系統
近年の品種改良は形態だけにとらわれず、色彩や香りの変化も追及され、青色のバラや、香水用のバラの開発が続けられています。また、品種改良の技術や従来の伝統的な交雑育種の方法のみだけでなく、遺伝子工学の応用、細胞・分子レベルの分析をもとにした方法もとられるようになり、飛躍的な発展をみせています。同時に原種バラやオールドローズの保存の努力も続けられています。
ハイブリッド・パーペチュアル・ローズ
四季咲きの雑種という意味の系統名として使われているが、春から秋まで咲き続ける真の四季咲きではなく、春に花を開き、秋に返り咲きする性質を持つ系統。
この系統はハイブリッド・チャイナとよばれる四季咲きコウシンバラ系とダマスク・ローズの自然交雑種や、コウシンバラ系とロサ・ガリカの交雑種、あるいはコウシンバラ系とダマスク・ローズの自然交雑によってできたさまざまな雑種起源系統が交雑され、育成されたものである。花は大輪、多花性で、耐寒性・耐病性に優れた強健な系統。19世紀後期から20世紀初期にかけての最盛期には2500種以上あったといわれるが、ハイブリッド・ティー・ローズの誕生により歴史的な役割を終える。今日栽培されるものはごく少数である。
ティー・ローズ
中国原産のコウシンバラとロサ・ギガンティアがその成立の基礎となっている。ヨーロッパへの伝来は、記録で明らかなのは1759年(92年の説もある)。
チャイニーズ・ローズは剣弁と整った花冠を加え、かなりの四季咲き性を持つことで多くの園芸家の興味をよび、当時のヨーロッパで栽培されていたあらゆる種類のバラと交雑され出来上がった系統。
ティー・ローズはその名の由来ともなっている優雅で豊かな紅茶の香りを持ち、かつ花色の豊かさによって、19世紀から20世紀初頭にかけて、王侯貴族の庭園を中心に盛んに栽培された。その後、時代は様々な条件下で栽培できる強さと、もっと明るくて大胆に目立つ色と、大きな花径の香り良い剣弁高芯のバラを改良していく。ハイブリッド・ティー・ローズへの足掛かりとして、現代バラ(モダンローズ)への道を切り開くことになった。この意味では中国から出たチャイニーズ・ローズ(コウシンバラ)の系統は、世界のバラの歴史の進歩に大きな影響を与えたことになる。
代表的な品種
レディ・ヒリンドン(Lady Hillingdon)/サフラノ(Safrano)/ドゥシェス・ド・ブラハン(Duchesse de Brabant) 他
ハイブリッド・ティー・ローズ
1876年フランスのギョー(Jean-BaptisteGuillot1840~1893)によりハイブリッド・ティー・ローズ第一号「ラ・フランス」が発表される。花は剣弁で花弁数が多く、香りはオールド・ローズのダマスク香とティー・ローズ系の両方を持ち、四季咲きの大輪花であるなどの特徴があった。現代バラの主流であるハイブリッド・ティーの歴史を開くことになった。豊富な花色、多様な花型、強健な性質、花期の長さなどが追及され、花色についていえば、本物の青色を除くあらゆる色が実現した。また花色を追求するあまりバラ本来の特性である香りがなおざりにされたこともあったが、近年香りの科学的研究が進み、新しい研究の発展がみられ、あらゆる要素を満足させるハイブリッド・ティーローズの作出を世界中のブリーダーが努力し続けている。
代表的な品種
芳純(Hoh-Jun)/ピース(Peace)/ブルー・ムーン(Blue Moon)/ラ・フランス(La France)他
ポリアンサ・ローズ
最初のポリアンサ・ローズは、ハイブリッド・ティーの創始者のフランスのギョー(Guillot)が、1875年に作出したパケレット(Paquerette)であるといわれ、その交雑親は日本から渡ったノイバラ
R.multiflora)とコウシンバラ系のヒメバラ(R.chinens minima)であるといわれている。四季咲き、小輪房咲きの木バラで、耐病性、耐寒性、耐暑性、耐乾性に優れた強健な種で、作出当時、交雑親のノイバラの学名の異称がロサ・ポリアンサ(R.polyantha)だったため、ポリアンサ・ローズと名づけられた。
代表的な品種
セシル・ブルンネ( Cecille Brunner )/ファイアーグロウ(Fireglow )/ザ・フェアリー(The Fairy )/ミニオネット(Mignonette)他
フロリバンダ・ローズ
今日、フロリバンダローズはハイブリッド・ティー・ローズと交配が進められた結果、両者の区別がつかずそれぞれの中間的な形態を示すものが多くなったが、基本的には四季咲きで、直径5~8㎝の花を房状に咲かせ、樹高は60㎝~120㎝という性質を持っている。
花色が豊富で、樹勢が丈夫であることも特徴となっている。この特徴が生かされ、庭園やテラス、緑地の芝生などに生き生きとした色合いをもたらす植物として用いられ、国や地方によってはバラの主流であるハイブリッド・ティーよりも栽培が多いくらいである。また庭園用などのほかに、切り花用として新たな用途を切り開き、花枝が長いスプレー・タイプなども開発されている。
代表的な品種
天の川(Amanogawa)/フリージア(Friesia)/イントゥリーグ(Intrigue)
ミニチュア・ローズ
近年、ミニチュアローズの人気は高まる一方といえる。優雅で小さな花弁と花冠、バランスのとれた樹形、上品で繊細な葉がその人気のもとで、また小さな庭にも適した樹勢も重要な要素といえる。ミニチュアの歴史は多くのバラと同じく、中国のバラにさかのぼる。原種として有名なものはコウシンバラ(ロサ・キネンシス)の矮性種で、ヨーロッパに紹介されたのは1815年である。
日本のミニチュアの歴史はヨーロッパよりも古く、江戸時代には「ナナコ(魚子)バラ」とよばれる矮性のバラが栽培されていた。これはロサ・キネンシス・ミニマの自然実生の一つと考えられている。
代表的な品種
ベビー・バッカラ(Baby Baccara)/オレンジ・メイアンディナ(Orange Meillandina)/オーバーナイト・センセーション(Overnight Senstion)/ショートケーキ(Short Cake)他
クライミング・ローズ
つるバラの誕生はヨーロッパにおいてかなり古い歴史を持つが、今日栽培される現代のツルバラは、日本原産のテリハノイバラ(R.wichuraiana)やノイバラ(R.multiflora)が欧米に紹介され、これらが交雑親になって成立したものである。
現代のツルバラは、小輪から中輪で花をたくさんつけ、一季咲きのものが多いランブラー系、大輪から中輪で四季咲き性があり、枝幹が2m以上に伸びる大輪咲き系、ハイブリッド・ティーやフロリバンダ、ポリアンサなどの木バラが突然変異でつる性に変わった枝代わり系の三つの系統に分けられる。
代表的な品種
ツル・チャールストン(CL.Charlston)/ツル・レディヒリンドン(Cl.Lady Hillingdon)/ツル・ヘレン・トローベル(Cl.Helen Traubel)他
シュラブ・ローズ
木バラとツルバラの中間の系統で、原種間の交雑種とその改良種を総称する便宜上の名である。一般には1~2m、一季咲きのものが多いが、四季咲きのものもある。耐病性が強く、剪定の仕方によっては木バラのようにも、ツルバラのようにも仕立てる事が出来る。
代表的な品種
紫玉(Shigyoku)/ヨーク・アンド・ランカスター(York and Lancaster)/ラベンダー・ラッシ (Lavender Lassie) 他